Capturing Phenomena
実験から現象解析まで統合的アプローチで、極限環境対応のCMC材料を実現

CASE 01
溶融含浸現象の解析と最適化
課題:MIプロセスにおける浸透現象と反応を予測し、
それに基づいた含浸条件の最適化を行う
SiC/SiC複合材料の製造方法の一つである溶融含浸(MI)法は、コスト効率が高く迅速に緻密なマトリックスを得ることができる利 点があります。しかし、未含浸領域や残留金属の発生により、材料特性が劣化するという課題があります。溶融・含浸現象におけるシリコン(Si)の挙動を解析するためには、流体運動だけでは不十分であり、固/液界面での濡れや反応の解析が必要とされています。
解決策:分子動力学法(MD法)を活用した濡れ性の
解析と合金組成の最適化
分子動力学法を用いて、溶融シリコンの濡れ性および界面反応をモデル化し、高精度な濡れ速度予測式を構築しました。さらに、修正Washburn式を改良し、接触角の時間変化や流路形状を考慮することで、未含浸領域の発生を抑制する 設計を実現しました。この結果、プロセス条件の指針が導かれ、MI法を効率よく利用することが可能になりました。

CASE 02
2000℃超級の耐熱材料の開発
課題:2000℃以上の極限温度環境下での優れた耐損耗性および耐酸化性を有する材料の開発
従来、超高温セラミックス(UHTC)は極超音速機や宇宙往還機用の耐熱材料として注目されてきました。UHTCは主に遷移金属のホウ化物や炭化物で、融点が3000℃以上のZrC、HfC、ZrB2などが含まれます。近年、ZrB2-SiCの二元系UHTCの研究が進められていますが、SiCは1800℃以上の温度帯でSiOとして気化し、形成されたSiO2も揮発するため、高温域での有効な耐酸化性を示さないことが明らかになっています。このため、2000℃を超える極限環境下で使用可能な新たな耐熱材料の開発が急務となっています。
解決策:炭素繊維とUHTCを複合化したC/UHTC複合材料(C/UHTCMC)の開発
比較的短時間で製造可能な溶融含浸(MI)法を用いてC/UHTCMCの開発に取り組みました。しかし、Zr単体は融点が高く、MI法を行う装置も限られており、さらにプリフォームの耐熱性も課題となりました。そこで、Si系合金よりも融点が高く、Zr単体よりも低融点のZr-Ti合金を開発し、これをC/C複合材料に溶融含浸することで新たなC/UHTCMCを作製しました。開発した材料の性能評価には 、極超音速機の空力加熱を模擬したアーク風洞設備を使用しました。その結果、2000℃以上の超高温域において優れた耐損耗性を示すことが確認されました。この成果は、次世代の極超音速機や宇宙往還機、さらには核融合炉のダイバーター材料など、極限環境下で使用される先端材料の開発に大きく貢献するものと期待されます。
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AI-Driven Acceleration
最先端のAI技術で、
材料設計から検査まで、
全プロセスの課題を包括的に解決

CASE 03
X線CTと深層学習を用いた
材料の損傷度予測
課題:非破壊で材料の損傷度を予測するモデルの構築
短時間で解釈性の高い予測方法の確立
従来、材料の損傷度を評価する際には破壊試験が主に用いられてきましたが、この手法はサンプルが破壊されるため製造現場や長寿命製品の評価には適していません。また、非破壊評価としてX線CTが活用されているものの、取得した画像から損傷度を定量化するには専門家による解析や多大な時間が必要でした。その上、損傷度の定量化に加え、損傷位置や進展メカニズムの解釈可能な評価方法が求められています。また、短時間で信頼性の高い結果を得るためには、大量の画像データを効率的に処理 し、適切なモデルを構築する必要があります。しかし、現状では評価手法の標準化や汎用性に課題が残されており、産業応用に向けた改善が必要とされています。
解決策:CNN×Attentionモデルによる3次元解析
Grad-CAMベースモデルによる因子可視化
2次元画像処理モデルと時系列解析モデルを組み合わせた独自の深層学習モデルを開発し、3次元的に損傷度を高精度に予測可能な手法を構築しました。このモデルはX線CT画像を解析し、層間剥離などの損傷を定量的に評価することを可能にし、損傷進展メカニズムを考慮した予測を実現しています。また、Grad-CAMを基にした独自の可視化手法を開発し、損傷位置を視覚的に示すことでモデルの解釈性を大幅に向上させました。これにより、損傷箇所の特定や原因の特定が可能となり、材料の健全性評価において実用的な解決策を提供します。

CASE 04
MIを用いた熱伝導率の予測と最適な組成の提案
課題:材料の熱伝導率予測モデルの構築
最適な組成の提案による開発期間の短縮
従来、材料の熱伝導率を評価するためには、実験的な測定や膨大な計算リソースを必要とするシミュレーションが用いられてきましたが、これらの手法には時間やコストの問題がありました。特に、CMCのような複雑な構造を持つ材料では、その組成や製造プロセスが熱伝導率に大きな影響を与えるため、より詳細な評価と最適化が必要とされます。このような複雑な材料系では、測定やシミュレーション結果を基に最適な材料組成を探索するには、膨大な試行錯誤を繰り返す必要があり、従来の方法では効率的な設計に限界がありました。
解決策:LightGBMとベイズ最適化を用いた最適な材
料組成の提案
まず、材料の組成情報や結晶構造、熱伝導率に関連する物性データを学習可能な形式に変換し、高精度な機械学習モデルを構築しました。このモデルは、既存データを基に熱伝導率を予測するだけでなく、活用可能な設計空間全体をベイズ最適化により探索することで、最適な組成を提案することができます。さらに、モデルの解釈性を高めるためにSHAPを導入し、各設計パラメータが熱伝導率に与える影響を可視化しました。これにより、単なる数値予測にとどまらず、材料特性の理解を深めることが可能です。最終的には、この手法を用いることで試作回数の削減、開発期間の短縮、さらには材料性能の最適化を実現します。
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